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衛士祭 ボツ案その3

2011.05.09 (Mon)
衛士祭、ボツ案その3。
侍従党の方々、ごめんね。キャラ崩壊しててごめんね。

勢いだけで書いてますので、それでもよろしければどうぞ↓


その3「指南」


 レハト様が無事に篭りを終えて、彼女の護衛をする日常が始まった。
 想いが成就したとは言え、さすがに普段からそんな態度を見せるわけにはいかない。
 仕事は仕事。浮かれて護衛に影響が出るようなことは避けなければ、と自分に言い聞かせて、彼女の後ろに控える日が続く。そもそも恥ずかしさが先立ってしまい、自分は彼女の手を握ることすらもまだできないでいた。
 
 そんなある日。突然、朝早くにローニカさんに呼び出された。
 なんだろう。今のところ、未熟ながらも一応仕事は難なくこなしていたつもりではあったのだが。
 
 レハト様はまだ寝ているらしく、寝室へと続く扉はぴっちりと締め切られている。主が起きる前に、とサニャちゃんは忙しそうに部屋のあちこちをちょこまかと動き回っていた。本当に側付きというものは大変だなあ、とその姿を見てしみじみ思う。

「さて。こんな早くにお呼び立てしましたのは」

 ローニカさんが、いつもの穏やかな笑みを浮かべながら話を切り出してきた。その様子からして、どうやら叱られるわけではないようだ、と安堵の息が漏れる。

「貴方も正式に側付き護衛となりましたので。これを機に、いろいろとお願いしたいことがあるのです」

「お願いしたいこと……とは」

「私もサニャも、レハト様の側付きとしてお世話をさせていただいておりますが。さすがにあの方が亡くなられるまでずっとお側に、というわけには参りません。それに正直申しまして、いろいろと雑事が多くなってきてまして……。手が足りなくて困っていたところなのです。そこで、護衛ではありますが、貴方にも少しお手伝いを、と……」

「つまり、俺……いえ、私もレハト様のお世話を?」

「貴方ならレハト様も喜ぶのではないかと」

「は、はいっ。私にできることがありましたらっ!! なんでもっ!! なんでも言ってください!!」
 
 鼻息を荒くして返事をする。今よりも、レハト様と一緒に長く過ごせるなんて願ってもない。
 そ、そうか。てっきり移動中の護衛だけしていればいいと思っていたけれど。正式に側付きともなるといろいろなことを要求されるものなんだな。そうだよな。こうして護衛する側とされる側の間で、強い絆が結ばれていくんだな。
 
 目を細めて、老齢の侍従がにっこりと微笑む。

「承諾していただけてなによりです。では、まず……。お食事のことなのですが」

「はい」

「実は、レハト様は大変好き嫌いが多くていらっしゃる」

 え。そうなのか。普段、食事をしているところなんて見たことが無かったから、全然知らなかった。
 自分は嫌いなものなんてないので、よくわからない感覚だが。篭りを終えたとは言え、まだ体は不安定なはずだ。ちゃんと食べなきゃ育つものも育たない。
 いや。別に小さくてもいいんだ。俺は全然そんなこと気にしない。別に見た目でレハト様を好きになったわけではないのだし。でかけりゃいいってもんじゃないだろうし。大きすぎると、肩が凝るという話を聞いたことも……。
 って何を!? 俺はレハト様に対して、なんたる破廉恥なことを……!!

「野菜が特にお嫌いのようです。肉や魚は問題ないのですが」

 ローニカさんの声で我に返る。
 よかった。顔が熱い気がするが、表には出てないようだ。目の前の侍従は自分を訝る様子もない。

「そ、それはいけませんね。なんでもしっかりと食べなければ、体にも良くありませんし」

「そうなのです。バランスのよい食事を、と思って用意していますのに、これではいつか体に障りが出てしまいます。ですが。実は難なく食べていただける唯一の方法がありまして」

「はあ」

「『あーんしてください』と言いながら口元に持っていくと、レハト様は喜んで食べてくださいます」

「……」

 ……ローニカさんが、レハト様に? いつも「はい、あーんしてください」と食べさせているのか?
 その光景を想像してしまい無言のままでいると、ローニカさんが言葉を続けてくる。

「いつもはサニャがその役目を請け負っていたのですが……。あの子も、レハト様が成人してからというもの、いろいろと忙しくなってしまいまして」

 あ、サニャちゃんか。びっくりした。

「ですので、これからは貴方にその役目をお願いしたいと」

「わ、私がですか……」

「護衛の貴方に、こんなことまでお願いするのは心苦しいのですが……。気が進まないと言うのでしたら、やはりどなたか他の方にお願いするしか……」

「いっ、いえ!! やります! やらせてください!! レハト様が残さずに野菜を食べてくださるのなら!! 三食とも、びっちりとお側にいさせていただきます!!」

「そう言っていただけると助かります。あとですね……」

 それからもいろいろと、レハト様の身の回りのお世話についての指南が続いた。

 高いところがあまりお好きではないので、できるだけ近くに付いていてやること。体を密着させるくらいの勢いで。怖さのあまり突然変な行動に出るかもしれないので、肩や腰を抱くぐらいしたほうがいい。
 実はかなりの寒がり。強がってそんなそぶりは見せないが、しょっちゅう手を握って暖めてやること。
 疲れやすい体質らしい。これもまた強がってそんなそぶりは見せないが、いつもより大人しいなと思ったら、迷わず抱っこして人気のないところで休ませてやること。レハト様はおんぶはお気に召さない。 
 貧血気味。いつでもお顔を手で触れてみて、冷たくなっていないか確かめること。
 寝つきが悪い。一人で寝るのが怖いらしい。頭を撫でたり、手を握ってあげたりして、必ず寝入るまで側に居ること。
 朝は毎日熱が無いかを確認する。額に手をあてるのは徴に触れるので嫌がられるため、おでことおでこをくっつけて確かめること。
 侍従二人の手が空かないような時は、朝に顔を拭いてあげること。靴を履かせてやること。髪を結ってあげること、等々。

 自分の知らなかったレハト様の様子が、次々とローニカさんの口から飛び出てくる。
 聞いているうちに、なんだかだんだん不安になってきた。
 
「ほ、本当にそんなに自分はいろいろと手を出してしまってよろしいのでしょうか……。四六時中、休みなくレハト様の側に付きっきりということになってしまいますが……」

 ただの護衛なのに、そんなに出しゃばっていいものなのか。越権行為という言葉が思い浮かび、つい疑問を口にしてしまったが、

「おはようからおやすみまで、暮らしを見つめるくらいの気構えがなくてどうされますか!! いいですか! 貴方は護衛とは言え、レハト様の側付きとなられたのですよ!? 寵愛者をお守りする、という覚悟が足りないのではないですか!?」

 今まで聞いたことがない老侍従の大きな声に、思わず身が竦む。
 いつの間にか、サニャちゃんがローニカさんの後ろで、うんうん、と頷いていた。

「もっ申し訳ありません! 若輩者の分際で、出過ぎた言葉を……!!」

「わかってくださればよろしいのです」

「そうです。わかってくれればサニャも嬉しいです。グレオニーさんが手伝ってくれると、すごく助かりますです。頑張ってくださいね」

「はいっ!!」

 そこまで口にしてから、ふと、生活を送るために必要不可欠な行為を思いつく。 

「ま、まさか……湯浴みや着替えも手を貸さなければならないのですか……?」

 その自分の言葉で、にこやかだった侍従二人の顔が凍りつく。

「……手伝いたいのですか?」

「グレオニーさん……。仕事と私情をごっちゃにしちゃ駄目でございますです……」

 引いている。二人とも、明らかに引いている。
 しまった。失言だった。

「違います! け、決して、そんな、自分はっ、そんなつもりじゃ……!!」

「ですよね。じゃあ、グレオニーさん。まず手始めに、サニャの代わりにレハト様を起こしてきてもらっていいですか?」
 
 サニャちゃんがにっこりとした笑顔を取り戻す。よかった。誤解されずに済んだ。
 でもほっとしたような、がっかりしたような。
 いや!! 違う!! これは仕事なんだ!! サニャちゃんの言うとおり、仕事に私情を混ぜちゃ駄目だ!!
 
「先ほど言い忘れましたが。レハト様は大変、寝起きが悪くていらっしゃいます」

 ローニカさんが、悲しそうな顔をして静かに呟く。
 また自分の知らない、新たなレハト様の一面に驚いた。

「寝起き、悪いんですか……」

「私など、何度蹴られたかわかりません……」

「サニャもです……」

 そうなのか。やっぱり側付きって大変なんだな……。二人とも、いつも笑顔でレハト様のお世話をしていたけれど。裏でそんなにいろいろと苦労していたなんて。
 
「大丈夫です! 自分は普段から鍛えていますから!! 思い切り蹴られようが殴られようが、全然へっちゃらです!! どーんとお任せください!!」

「あのね、グレオニーさん。一つだけレハト様がご機嫌よく起きてくれる方法があるんです」

「あ、そ、そうなの? どんな?」

「やさしく、やさし~く、でも少しず~つ、ぎゅーって体を抱いてあげるんです」

「……」

「そうしたらレハト様は暴れずに起きてくださいます。サニャがこの数カ月で会得した技なんです!!」

 どうだ、と言わんばかりに、サニャちゃんが手を腰に当てて言い放つ。
 やさしく、やさしく……。ぎゅーって……。

「……俺が?」

「そうです」

「ぎゅーっ、て?」

「……やっぱり嫌ですか。そうですよね、グレオニーさんも忙しいですもんね。自分の仕事を他の人に押し付けるなんて、甘えちゃ駄目ですよね。サニャ頑張ります。例え忙しすぎて倒れようとも、睡眠を削ろうとも……」

「い、いや!! やるから!! 泣かないで、サニャちゃん!!」

 慌ててサニャちゃんを宥めると、途端に彼女の顔に笑みが戻る。

「じゃ! お願いしますね!!」 

 ぐいぐいと背中を押されて、寝室の扉の前に立たされる。
 そうだ。仕事なんだ。やさしく、やさしく、少しずつぎゅーっと……。

 意を決して扉を開ける。
 やがて、寝室中につんざくようなレハト様の悲鳴が響き渡った。



もちろん、侍従二人はあることないことをでっち上げて言ってます。
レハト様は好き嫌いしないし、寝起きも寝つきもいい健康優良児。貧血?なにそれ美味しいの?な人。二人に世話されすぎて、申し訳なく思ってるくらい。自分でやるから!顔も拭けるし、靴も履けるから!!みたいな。
グレオニーがいつまで経ってもモダモダしてるから!もう見てられない!レハト様かわいそう!!
って思った侍従二人がちょっと企んだわけです。

いつもと違うグレオニーにレハト様がびっくりしてモジモジしたらいい!!そんなレハト様を見て、グレオニーもモジモジすればいい!!でもその手を止めるな!!引っ込めるな!!
ほんとにもう、どうしてこの男は自分からガンガン行ってくれないのか。動かしにくいったらありゃしない。

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